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名古屋家庭裁判所 昭和53年(少)2216号 決定 1978年7月07日

少年 M・Z(昭三六・一〇・六生)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は

1  昭和五三年三月二六日午前一時ころから同日午前三時三〇分ころまでの間愛知県西春日井郡○○町○○××番地所在の○○モータース駐車場に置いてある廃車した自動車内において、みだりにトルエンを吸入した

2  遊び友達のA(昭和三三年七月三〇日生)、B(昭和三七年一月二七日生)及び実兄のM・S(昭和三四年一〇月三一日生)と共謀のうえ、同月二七日午後一〇時三〇分ころから同日午後一一時ころまでの間、岐阜市○○××番地○○ドライブコース頂上付近駐車場に駐

車中のM・S所有の普通乗用自動車(○○××○××××)車内及び同車両付近路上において、みだりにトルエンを含有するシンナーを吸入した

3  遊び友達のA、C(昭和三六年五月一三日生)及びBと共謀のうえ、同年四月二六日午後五時三〇分ころ、愛知県西春日井郡○○町○○××番地先路上に駐車中の普通乗用自動車(○○××○××××)車内において、みだりにトルエンを含有する接着剤を吸入した

4  同年五月三日午後一一時三〇分ころ、愛知県一宮市○○町○○×南方約二〇〇メートル付近路上において、公安委員会が制限速度を時速六〇キロメートルと指定するところを時速一一九キロメートルの速度で自動二輪車を運転した

ものである。

(法令の適用)

1ないし3の事実につき 毒物及び劇物取締法三条の三、二四条の四、同法施行令三二条の二

4の事実につき 道路交通法二二条一項、一一八条一項二号

(処遇事由)

1  少年は、昭和五二年一月一五日から同年三月一三日までの間、窃盗一三件、住居侵入二件、恐喝一件をはたらき、同年八月三一日不処分となり、同年一〇月一一日いわゆるシンナー遊びを行つて同五三年一月二七日保護観察の処分を受け、保護観察所からしばしば講習・個別指導を加えられたにもかかわらず、上記非行事実1ないし3記載のシンナー遊びを反覆したもので、シンナー吸入の回数も多く常習化している。また少年は、同五二年五月二九日から同五三年五月一二日までの間無免許運転一件、整備不良二件、一方通行違反一件、信号無視一件により、それぞれ不処分(自庁講習)となつたものであるが、昭和五三年二月には近隣の不良仲間と自動二輪車で暴走する「○○」を結成し、○○駅周辺を徘徊し××方面へ暴走し、今回前記非行事実4記載の交通違反を行つたもので、交通違反を累行している。

以上のとおり少年は、シンナー吸入、交通違反の非行がかなり進んでいる。

2  少年は、本籍地において出生して間もなく愛知県に転居し、稲沢市立○△小学校に入学した後、三年生のころ○○町立○○小学校に転校して同校を卒業し、○○町立△△中学校に進学したが、勉強意欲に乏しく、しばしば怠学し成績もかんばしくなく、近隣の不良友達と交遊し学校にも行かず遊び歩くようになり、シンナーやタバコを吸うようになつた。少年は昭和五二年三月に中学校を卒業して働くようになつたが、当初の自動車修理工場も四ヶ月ほど働いただけで退職し、その後喫茶店で約一ヶ月、パン屋で三ないし四日間アルバイトをしただけで無為徒食し、同五三年初ころ内装店に就職したが同年二月には退職し、その後は定職にもつかず、長期間にわたり無為徒食の生活をしていた。

3  以上のとおり少年は、中学二年生ころから交友関係が広がるにつれて遊び優先の生活になじむようになり、度重なる指導を受けながら非行を重ねている。その背景としては、両親共働きで放任されて育つてきていること、そのため両親との関係が稀薄で、家庭が少年をつなぎとめる力を持たなかつたこと等があげられるが、少年の怠惰で法規無視の性格や生活態度は著しく問題である。

少年は、活動性が高く抑制がきかず行動は、その場の雰囲気に流されやすい、また主体性に乏しく他に同調的に行動しがちであり、学習や仕事に対する耐性や意欲にも乏しい。そして、少年は徒遊生活が身についており、社会規範が行動枠となり得ず、仲間集団の価値感が自己の行動基準となり、非行への抵抗感も非常に弱くなつている。

4  以上のとおり少年には問題があり、今回の観護措置によるも充分内省を深めきれていない点に鑑みれば、この際少年を主文掲記の少年院に送致して、専門家による矯正教育を施すのが相当であると判断する。なお、少年の非行性はそれほど進んではおらず、今回少年鑑別所に入所する観護措置によつて相当のショックを受け、少年なりに反省しようとする姿勢が認められるので、短期処遇課程が相当である。

よつて少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項、少年院法二条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 柴田秀樹)

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